注文住宅の設計やリフォームなどを主に手掛ける辻野建設工業株式会社の代表・辻野浩様。
建築業以外にも、米や麦の集荷業務を担う「辻野商店」や、灯油・プロパンガスを扱う「当別熱源」など、幅広く手掛けています。
北海道の当別町において様々な事業を展開している辻野様に、グループ企業の歴史をはじめ、この先の展望を伺ってきました。
建築業のみならず、農業や燃料事業も
ーー様々な事業を展開していらっしゃいますよね。創業の歴史をお聞きしてもよろしいでしょうか?
うちはいわゆる同族経営で、私自身は5代目にあたります。
農家さんを相手に農協のような事業をするのが現在の主事業ですが、元々の創業は遡れば大正3年になりますね。それから建築業を57年前に開始して、50年前に燃料事業、30数年前にアパート経営を始めました。
法人形態で農業を営む、農業生産法人を開始したのは13-4年前で、まちづくり会社を3-4年前にスタートさせています。
つじの蔵のお豆腐
参照:http://www.tsujinokura.com/
ーー古くからの歴史があるんですね。
農協のような事業と先ほど仰っておりましたが、顧客は主に農家さんですか?
はい。肥料をはじめ、種や農薬、あとは土壌改良材なども扱っています。お米や麦、あとは大豆などを農家さんから仕入れてきて業務用に販売したり、麦を集めて製粉会社に卸したりもしていますね。
ーー農家さんに対して初期投資(資材購入費用など)を代わりに負担するなど、銀行機能のような役割も?
そういった面もあるかもしれませんが、直接的にお金のやり取りをしてしまうと、我々は貸金業になってしまいます。以前は貸金業的な動きでしたが今は支払い条件等で調整しています。
ーー農協さんに入っている農家さんや、その他の企業と競合している関係なんでしょうか?
お米・麦の集荷に関しては、そういった面もあるかもしれませんね。
同じ組合の仲間であっても、同業者が隣接していればバッティングすることも、時にはあります。
ほとんどの場合は、紳士的に進めていますが。
近頃は、農協を介さずに独立して市場を開拓している農家さんもいますしね。
ーー辻野さんが主に取引する農家さんは、大体決まっているんですか?
そうですね。主なお取引先は長いお付き合いの農家さんなのですが、様々なチャンネルで販売拡大をしようと努力しています。
ーー農協と貴社の間で技術競争が起こる場合もあるのではないでしょうか。
技術というほどではありませんが、製品の価格には差をつけられない分、小麦などの農作物の歩留まり率を高くするなど様々な工夫を凝らしています。
徐々に顧客を増やしつつ、市場を拡大していく施策は常に検討していますよ。
ジンの蒸留所
参照:https://shakotan-spirit.co.jp/top.html
ーー続けて、建設業について聞かせてください。主な事業は、注文住宅が多いのでしょうか?
注文住宅は、建設事業全体の2割ほどです。その他は公共事業やスウェーデンハウスの大工工事部門やリフォーム、そして民間の建物なども手掛けています。
建築業に関しては、手掛ける事業は毎年のように変わるのが特徴と言えるかもしれません。
たとえば、今年(2020年)はまちづくり事業の一環で、積丹にジンの蒸留所を建設しました。
ーージンの蒸留所ですか。とても興味深いです。
建設業から燃料事業に手を広げたのには、何かきっかけがあるんでしょうか?
石炭を扱っていた時代に、親戚が経営していた会社が傾いてしまいました。
祖父がどうにかしようと事業を引き継ぎその後、石油やプロパンガスが普及する波に上手く乗ることができたからですね。
ーーお話を伺っていると、一会社に一事業といったように、
事業内容ごとに会社を分けているように思いますが、別会社のほうが都合がいいのでしょうか?
同業者でも会社をひとつにまとめているところもありますが、どのみち部門管理しなければなりません。別々の会社にしたほうが、経費管理の点からも進めやすいと思っています。
今後の展望について
ーーまちづくり事業や起業支援についても聞かせてください。
当別町を支え、発展させる役割を期待されているのではないでしょうか。
期待されているのだとしたらとても嬉しいですし、責任持ってやり遂げたいと思っていますが……
「勝手にやっている」と思われているかもしれませんね。
「こうなったらいいな」という当別町のイメージが、漠然とですがあるんです。
少しでもその理想像に近づけたらいいなと思って、日々取り組んでいます。あまり流行り言葉は好きではありませんが、SDGsがそれにあたるかもしれません。
ーー素晴らしいですね。起業支援はどういった理由で初められたのでしょうか?
現在、事務所や土地をお貸ししている会社が20社ほどあります。中には、すでに当社の売上を超えている会社もあるんですよ。
新しく起業する人の着眼点って、面白いんですよね。私が少し手伝うことでやりたいことができる、事業を広げられる企業があるなら、積極的に支援したい。銀行に行けば相談には乗ってくれるかもしれませんが、銀行が自らの事務所や土地を用意してくれるわけではないですしね。
当社だったら同じ経営者として話を聞けますし、事務所や土地選定に関しての提案やアドバイスもできます。
ーーグループ企業全体として、今後の展望や構想について聞かせてください。
一言でいうと「持続可能性」ですね。熱源にバイオマスを使う仕組みができたらいいな、と考えています。例えば、薪ストーブを使えば簡単です。大した取り組みではないんですが。
あとは、私自身、ヤギを3匹飼っているんですよ。のんびりとして、穏やかで、良い暮らしですよ。そんな風に、豊かなライフスタイルを実現できる人が、ひとりでも増えればいいなと思いますね。
そんな町って、ありそうであまりないじゃないですか。
それでも私が実現できているんだから、「挑戦したい」「やってみたい」と思う方は、みんなできると思っています。
スローライフだけど所得が高い。そんな生活が両立できる人が増えればいいですよね。
< 辻野建設工業株式会社>
代表者: 辻野 浩
設立 : 昭和37 年3 月30 日
本社 : 石狩郡当別町末広380 番地辻野ビル内
[公開日]2020年07月30日
[取材] 畠山 和也 /臼井 華蓮[編]大久保 亮佑[著]北村 有