「海外」にも強い通信会社に。H.I.S.Mobile株式会社


今回お話を伺ったのは、H.I.S.Mobile株式会社の代表を務める猪腰英知様。

H.I.S.Mobile株式会社は、既存のSIMに貼るだけで海外で使える「変なSIM」を始め、
日本国内で使える格安SIM、Wi-Fi等を取り扱っている通信会社です。

現在までの経緯や、今後の展望についてインタビューしました。

SIM事業を始めた理由

 

ーー事業を始めたきっかけを教えてください

日本通信株式会社(以下、日本通信)から、既存のSIMに貼り付けるだけで海外で使えるSIMがあるので、何か一緒にやりませんかとお声がかかったことが始まりです。

その当時は格安SIMがものすごい勢いで伸びている中で、エイチ・アイ・エス(以下、HIS)のリソースに取り込めば、将来性がある上に主要事業の旅行との相性が良く、HISのブランドを利用すれば広告宣伝費を掛けずに事業が進められるのではないかということで始まりました。

 

ー最初はお一人で立ち上げたのですか?

最初は僕と、HISと日本通信から1名ずつの、合計3名でスタートしました。
他にも手伝ってくれるメンバーはいましたが、専属で事業を回していたのはこの3名でした。

もともとHIS側と日本通信側の2社間で半年くらいの緩やかな準備はされていたのですが、
私に社長としてオファーがあったのは1月中旬、会社設立は2月15日なので、特に準備期間は無く、
通常通りの業務を行いながら、会社立ち上げの準備をしていました。
HISでは航空の仕入れのグループリーダーを1月末まで担当し、実質15日間で準備しました。

それを楽しいと思うかひどいと思うかは、捉え方次第ですが、このスピード感が僕は好きです。

今までにないことを作り出すとか、新しいことに取り組むこと自体が好きなので、話をもらったときにも、「そもそも、何やればいいかわからないけどやります。」って、やるかやらないかだったらやるの一択しかないと思って返事しました。

 

ーー勢いがすごいですね。不安は無かったのですか?

基本的に世の中どの会社にも不安はある中で、道を踏み外さなければ自分たちが食べていく方法は絶対にあると思っています。

あとは、始める前からHISというブランドがあり、信用・知名度等の見えない資産価値をすでに持っていて挑むものにリスクなんてないっていう考え方ですね。

オンリーワンになれる構図は整っている

https://his-mobile.com/

ー貴社の事業内容を教えてください

当社は大きく分けて3つの事業を展開しています。

1つ目は、日本国内のMVNO事業(SIM事業)です。

MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は、格安SIMを提供している事業者のことです。
大手の携帯電話会社から通信回線を借り、自社ブランドのサービスとして格安SIMを提供しています。

格安SIMといっても色々あり、月額契約、単月買い切り契約など契約期間が違うものや、SIMカードだけでなく、スマートフォン等の新品・中古のデバイスを販売したり、携帯電話の買取も行っています。

2つ目は、Wi-Fi事業です。

Wi-Fiは国内、海外用共に貸出・販売しています。国内はテレワークや在宅が増えたので引き合いが強まりました。海外に行かれる方は、SIMではなく、Wi-Fiを利用されるお客様が多いですね。

現在は新型コロナウイルスの影響で海外旅行にいけませんが、HISでご旅行される方や、HISグループ内にも貸し出しを行っています。
今は当然売り上げもなくなっちゃいましたけど、コロナ前は、一応全店舗で毎月何千台とか貸出していたんですよ。

https://his-mobile.com/overseas/hennna-sim

3つ目は、変なSIMです。

海外旅行の際に、お持ちの携帯電話に貼るだけでご利用いただけます。
何度でも使えて、Wi-Fiよりも価格は抑えられます。

変なSIMも日本国内のSIMと同様、各国の通信事業者から通信回線を借りて提供しています。
各国のキャリアを取りまとめている事業者と契約して、約80カ国くらいの通信事業者に繋がるように、データが書き換えられるようになっています。

日本国内で使うSIMカードはCDみたいなもので、書き換えができない。一回書いたら終わり。これが日本のSIMカード。
僕らがやってる変なSIMは、CDRWみたいな、書き換えや上書きができますよというSIMカードになります。

 

ー大手の競合が沢山いるイメージですが、どのように優位性を出しているのでしょうか

僕らのブランドの一番の優位性は、「海外に強い」というイメージだと思っています。
ですが、市場を見渡してみると基本的には圧倒的弱者の立場なんです。
通信業界内ではレイヤーが3層に分かれていて、当社が所属しているのは一番下の有象無象1000社以上いる、価格競争の激しい層だからです。

ただしこの層で決定的に弱いのが「海外」なんです。データローミングサービス(※1)に対応しているのは通信キャリアMNO(Mobile Network Operator)(※2)だけなので、価格が安い仮想通信事業者であるMVNO層はみんな海外ネットワークが弱いんです。

一方で僕らは格安SIM事業者の中で海外サービスが充実しているので、ある部分に来たときに強いという戦い方をしています。
「海外に強い」というもともとのイメージに沿って、ちゃんと海外に強くなってれば、安いだけでなく、オンリーワンになれる構図が丁度あるので、ポジショニングとしては明確です。

※1データローミングサービス
契約している通信事業者の通信サービス範囲外でも提携している他の事業者の設備を用いて回線を利用できるようにすること。

※2MNO
自社でモバイル用の回線網を有し、通信サービスを提供している会社。大手の携帯電話会社が該当する。

将来の展望

ーありがとうございます。海外に力を入れるということでしたが、将来の展望を教えてください

将来に向けては2つあって、1つ目は、通信の技術で旅行の価値を上げていきたいと考えています。

通信は旅行に絶対欠かせないものだと考えていて、せっかくHISの中で通信事業をやっているので、最終的には旅行に入っていきたいと思っています。
コロナ前から考えていたのですが、旅行を最大限楽しむためのツールも提供していきつつ、
通信の技術を使ってバーチャルでも旅行と同じようなワクワク感を味わえるような体験を提供したいと考えています。

2つ目は、顧客基盤をより強固にしていきたいです。

現在は、通信の技術を改めて見直して、お客様にどのような価値が提供できるか再度考えて、基盤づくりをしています。まずは旅行から取り組んで、ゆくゆくは旅行以外でも使えるサービスを提供していければと考えています。

最終的には、旅行好きのお客様のコミュニティを作れるようなサービス展開をしていきたいです。
ただの通信屋さんではなく、プラスαの価値を提供して、当社のファンになっていただけるようなサービスを提供していきたいです。

 

H.I.S.Mobile株式会社

代表者: 猪腰 英知

設立 :2018年2月15日

本社 :〒105-6905

東京都港区虎ノ門4-1-1神谷町トラストタワー5階

HP   :https://his-mobile.com/

 

[公開日]2020年03月16日

[取材]橋本 理子・臼井 華蓮[編]大久保 亮佑[著]臼井 華蓮